リックソフトブログ

2024年01月24日

Jira(ジラ)の自動化機能を使ってサブタスクのストーリーポイントの合計値を親タスクに自動入力させてみた

Author

鷲田拡平 Washida.Kohei

鷲田拡平</mt:Var>

  

リックソフトは、アトラシアン製品をお使いの方の「困った!」をすぐ解決する「サポートプラス、サポートプラスpro」を提供しています(有償)。アトラシアンのトレーニングを受けたリックソフトのヘルプデスク担当社員が、あんなお悩み・こんなお悩み・設定でのつまづきに対して、アドバイスをしてくれます。
利用者の声(一部)→「みんなの銀行さま」「SCSKプレッシェンドさま」

今回はりっくまさんから、こんな問い合わせが届きました。

きょうの回答者:リックソフト株式会社 ソリューション開発部 鷲田さん。
岡山県からさまざな企業のJira環境を整備しています。アトラシアン社の資格ACP-620保有者

Jiraはプロジェクトメンバーが持つタスクをボード等で管理しながら、その1つ1つのタスクのストーリーポイントを設定し、集計することができます。サブタスクはそのタスクをさらに細分化したもので、タスクはサブタスクの集合でもあります。

ただしJira標準機能では、親となるタスクのストーリーポイントはサブタスクとは分離された独立したものとしています。もちろん別のものとして集計することもあるかとは思いますが、サブタスクの数字を自動的に合計してくれればとても便利ですよね。

アジャイル開発のキーワード:ストーリーポイントとは

ストーリーポイントは、アジャイル開発でタスク毎の「所要時間だけでなく、難易度、リスク等を考慮した見積数値」のことです。チームや環境によって基準が異なります。そのチームの共通の価値基準をもってつくられる、タスクごとの相対的な測定単位です。

細かな見積手法については、フィボナッチ工数見積(プランニングポーカー)やストーリーポイントマトリクスを使うなど、やり方や企業文化によって様々です。慣れないうちは、既存のお見積りの手法をまず当てはめて数値化するのが直感的で一番良いかと思われます。

Jiraでストーリーポイント機能を使うための下準備

あわせて...この機能を使おうと思うと、まずプロジェクトやボードの見積設定を有効にする必要があります。
こちらのドキュメント をご参照いただき、事前に見積を有効にしておいてください。

また、見積方法についての設定はボードに含まれていますので、ボード設定もご参照いただけると幸いです。

前置きが長くなりました。今回はサブタスクの数値の合計を自動的に親タスクに設定する、「自動化(Automation)」の解説です。

サブタスクの数値の合計を自動的に親タスクに設定する「自動化(Automation)」設定方法

まずは課題の作成と、それぞれの作業を見積もってみましょう。

課題に対してサブタスクを作成し、そのサブタスクに見積の数値を入れます。

例としては上のような構成です。右の方に3,16といった数字がありますが、こちらが今のサブタスクのストーリーポイントの数値です。

メインのタスクの下にサブタスクが3つあり、それぞれのタスクにストーリーポイントが設定されている状況ですが、メインタスクはサブタスクの数値は合算されていません。
これを自動化で自動的に合算できるようにするのが今回の目標です。

それでは自動化タスクを作ってみましょう。

自動化タスクは、プロジェクト設定「自動化」から設定できます。

「ルールを作成」を選択して、早速ルールを作っていきましょう。

自動化ルールは、図のようなブロックを組み合わせて設定する簡易のプログラムのようなものになっています。

ブロックにはいくつか種別があり、それぞれ役割が大まかに分かれています。以下、それを解説しながらルールを作ってみましょう。

・トリガー

トリガーとは自動化の実行条件のことです。まずはこれを指定して、ルールが実行される条件を考えましょう。

今回の場合は、「サブタスクのストーリーポイントが更新されたとき」に動けばいいので、「フィールド値の変更時」を指定しますがあらゆる課題の更新自体をトリガーとしたり、コメントを追加したり...といった条件指定も可能です。

ただし、あまり広い範囲をトリガーに設定してしまうと意図しない挙動をしてしまいがちです。可能な限り限定した実行条件となるように制御することを意識してください。

・条件

トリガーと似ていますが、こちらは自動化が実行された後、後の処理をどういった条件で実行するか...といった制御を行うものになります。

今回はこちらに「課題タイプがサブタスクであること」という指定をします。
トリガーとあわせて「サブタスクのストーリーポイントが更新されたとき」という実行条件になりますね。

・ブランチ

これはちょっと難しい概念ですが...ブランチ(branch)とは「枝」のことで、自動化においては処理の分岐を意味します。

元々自動化は「実行条件となった課題に対する更新」を行うもので、たとえば実行条件となった「サブタスク」自体に変更を加える場合はこのブランチは必要ありません。

しかし、今回更新対象なるのは、サブタスクの親となるメインタスクになりますので、このブランチが必要となります。

ブランチを追加する際には、「ルール/関連する課題を分割する」を選択した後、「関連課題のタイプ」「親」を指定してください。

これで、後のアクションの実行対象が、「実行条件となったサブタスクの親」となります。

・アクション

最後に、更新処理自体を設定します。

ブランチで指定した課題に対し、アクションとして「課題の編集」を設定します。
「設定するフィールド」に「Story Points」を指定し、その値として {{issue.subtasks.Story Points.sum}} を設定します。

この値は スマートバリュー といって、動的に自動化のデータを取り込むための言語です。
今回指定した値では、親課題から見た、サブタスクのストーリーポイントの合計という意味になります。

これで自動化の処理が完成しました! 名前をつけて、ルールをオンにしておきましょう!

さて、あらためて課題に戻ります。一覧を改めて見て、「GreatFunction作成」のストーリーポイントを変更してみましょう。

Story Pointsを5に変更すると...

自動的にメインタスクに合計値が反映されました! 問題なく動いているように見えますね。

自動化の実行状況は「監査ログ」から参照が可能です。もしうまく動かないと思ったら、これを見て原因を確認し、修正しながら思ったとおり動くようになおしていきましょう。

自動化は、この合計の処理に限らず、本当に様々な制御が簡単に実行できるようになる仕組みです。
この記事を参考に、他の色々な自動化も是非チャレンジしてみてくださいね!

【サブタスクのSPが親タスクに反映されない仕様についての考察】

Jira Softwareはスクラムのフレームワークに沿った運用を想定して設計されています

スクラムの考え方では、プロダクトバックログはストーリーポイントで見積、スプリントバックログは時間見積で行うのが一般的で、Jira標準のストーリー課題は、バックログボードにプロダクトバックログとして積み上げらますがサブタスクはスプリントバックログとして、スプリント実行後にカンバンボードに展開されるもののため、標準では集計する機能がついていない、と考えられます。

比較的粒度が大きくなるプロダクトバックログの作業には、正確な見積もりをするのは困難なので個々人の能力に依存した見積を排除するとともに、短時間で見積の合意形成を図るためにストーリーポイントを使って相対的な見積を行います。プロダクトバックログの見積は、ストーリーの優先度や粒度の見直しを行いながら逐次実施していきます。

一方、細かく作業を洗い出したスプリントバックログの作業であれば、スプリントプランニングのタイミングでタスクの洗い出しと同時に見積を行うためある程度の見積精度は担保できることから、時間を使って現実に近い見積値の設定することが可能です。
Jiraのデフォルト設定では、スプリント実行後に初めて時間見積が設定できるようになるのもこのためです。

こういった事情から、ストーリーポイントの見積は自動的に集計機能がつけられていないと考えられるわけですが...
しかしながら、自動化はユーザの「やりたい」を簡単に叶える非常に便利なツールです。

「こうあるべき」といった話は色々とありますが、まずは自分たちにあわせた形で運用することも重要ですので、積極的に自動化を利用し、自分たちにとって使いやすいJiraをぜひ考えてみましょう!

【思い出話】プロジェクトマネジメントといえばExcel(エクセル)だった...

昔話になりますが、以前私はプロジェクトマネジメントといえばExcelで、ありとあらゆる資料をExcelで管理しておりました。(今もそれで管理している人もいらっしゃるかも...)

数値の入れる枠がずれたり、関数が消えたりなんて事故はあるあるで、それが原因で集計ミスして会議で慌てたり、怒られたりといった苦労をしたのも今は良い思い出...いや、やっぱり良い思い出にはなりませんね。失礼しました。

ここまで読んでくださった方の中に、現在もExcelでプロジェクト管理をされているという方がいらっしゃいましたら、試しにJira Softwareを使ってみませんか。

                                   

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