2023年11月24日
プロジェクト遅延の原因分析、適切にできていますか?~プロジェクト管理ツールでデータドリブンに原因分析してみた~三井 貴博 mitsui
プロジェクトが計画通りに進まないことに頭を悩ませているプロジェクト管理者は多いことと思います。
プロジェクト遅延の原因は何なのでしょうか。多くの場合、振り返り等を通じて得た情報を元に、直感や経験に基づいて問題を特定、改善する手法が取られがちです。それ自体は有益な情報でありますが、一方で客観性に欠け、影響度の大きさや優先度を見定めづらいといった問題もあります。
今回は、データを活用して、ボトルネック要因を特定してみました。Jira Softwareなどプロジェクト管理ツールを利用されている方は、ツールに蓄積された情報(タスクの状態、作業時間、滞留場所、成果量)などを分析することで、遅延が発生しやすい条件や、見積もりと実際の作業時間に大きなギャップがあるタスク(そのものや、その傾向)を特定できます。
あてずっぽうではなく、データに基づいて問題点を明らかにし、自分たちのチーム・組織に効果的なリカバリプランの立案が可能になります。試行錯誤する時間・手間を削減し、ピンポイントに原因究明をしてきましょう。
まずは、どの工程で遅れが生じやすいのか、実態を理解する必要があります。
Jiraの場合、1つのタスクが完結するまでにたどる工程はワークフロー機能によって管理されています。
仮にシンプルなワークフローを持つ課題タイプがあったと仮定し、以下のようなステップがあるものとします。
[未着手] → [進行中] → [ レビュー待ち] → [完了]
実質的なタスクの所要期間は、ステータスが[進行中]と[レビュー待ち]となりますが、どちらに焦点を当てて体制やルールの改善を行えば、ボトルネックを解消しやすくなるでしょうか。
データがない場合、この判断をすることは難しいですが、幸いなことにJiraの中にはこれらを可視化するための元データがありますので、それを活用していきます。
しかし、これらのデータを効果的に活用するためには、Jiraやそのプラグインだけでは不十分で、分析が難しい側面があります。
リックソフトはアトラシアン製品のデータ活用支援ツール「Cadre」を提供しておりますので、今回はCadreを使った解析方法を紹介します。
Cadre は Jira Software や Confluence に蓄積するデータ活用を促進し、あらゆるBIツールでのビジュアル化を可能にします。
まずは分析用のデータを用意しましょう。
今回の例の場合、
というデータがあれば、どのステータスにおいて滞留が発生しやすかったのか内訳を分析することができます。
Jiraではステータスは必須フィールドのため入力済、変更履歴はステータスを変更するだけで自動で記録されるため、すでに分析したいデータのほとんどが用意できています。
分析軸については、どのような仮説を立てるかにもよりますが、プロジェクト、課題タイプ、担当者など前準備なく使える値の範囲でも大まかな傾向を掴んでいただくことは可能です。
必要に応じてコンポーネント、ラベル、カスタムフィールド等を整備して、分析軸として使用いただくこともできます。
分析用のデータをツールから取り出して、利用可能な状態にしていきます。
※一般的にETL(Extract, Transform, Load)処理と呼ばれます。
を収集するためのマスタを設定をしたら準備完了です。
実際にデータにアクセスし、活用を進めていきましょう。
データを集計したいツール(Tableau等のBIツール、Excel、他)から取得したデータにアクセスすると、前処理済のきれいなデータが手に入ります。
これらのデータを使って(組み合わせて)、すぐに分析をはじめていきましょう。
今回はTableauからアクセスしていきます。
いくつかのデータを組み合わせて使用することで、幅広い疑問に対しての答えが用意できるようになります。
今回は、変更履歴と課題フィールドのデータを使用しつつ、時系列の傾向を見るために事前に時系列展開したデータも使用します。
変更履歴のデータ(前処理済)そのものは以下のようなイメージです。
滞留が起きやすいワークフローステップはどれでしょうか?
ステータスと滞留時間の分布をみるために、各ステータスに滞留していた期間を数値化し、ヒストグラムで表示してみます。
ヒストグラムのビン(=データ区間となる幅)はTableauが自動計算してくれるため、細かい知識がなくても作成することができます。
<考え方のヒント> 軸を差し替えて問題を探す
何が遅延の原因か分からない状態のため、いろいろな仮説を立てながら分析軸を差し替えたり、範囲を調整したりを繰り返し、原因を探していきます。
BIツールを利用することでデータをフィルタしたり、軸を差し替えたりする度に、即座にデータが表示されます。 このような操作が簡単にできることもBIツールのメリットではありますが、即座に結果が表示されることで、すぐに状況が見えるというスピード感によって、思考の速度を妨げず様々な検証が短時間でできることが最も大きなメリットと言えます。
時系列の傾向を見る(その問題は改善しているのか、悪化しているのか)
データを時系列に見ることも重要です。
データ全体で集計した結果(定量値)が悪かったとしても、過去から見て改善傾向にあるならば様子見で問題ないでしょうし、更に悪化傾向にあるならば早急に対策が必要です。
その他、様々な仮説を立てて検証してみる
仮説によって必要になるデータも異なります。様々なデータを取得して、新たな気づきが得られないか検討してみましょう。
滞留期間が長いのか、短いのかを主観で判断することは望ましくないため、定量的な基準を設けて判断する必要があります。
例えば、"レビューは3日(営業日)以内に完結する"等の運用ルールが存在するかもしれませんし、もし存在しなければ分析の結果を踏まえて新たにルールを定める必要があるかもしれません。
ルールがある場合、基準を超えた滞留期間の課題のみに対象を絞って原因を深掘りする事ができますし、可視化の結果を踏まえて新たな基準を定めるのも有効な対策になります。
レビューが所定期間内に終わらないことが全体の遅延要因だと分かった場合、レビューの時間が確保できないのか、レビューそのものにかかる時間が想定よりも長い(ルールが変わる中で負荷がかかりやすくなる等)のか、明確な原因にたどり着くまで深掘りし、特定された原因に対して妥当な改善策を講じることが出来るようになります。
幸い、Jiraには作業工数を記録する機能もあり、具体的な作業内容に対して投じた工数を集計することもできます。
作業工数含め、プロジェクト管理ツール内の様々なデータを収集、活用して、新たな仮説を立ててみながら改善策を検討していきましょう。
データ準備そのものに多くの時間を取られてしまうと、本題の業務分析の時間が取れず、データ活用を諦めてしまうこともありますので、データ準備を短時間、低コスト、かつ容易な実現手段で整備できるかどうかが、データ活用の成功の秘訣と言えます。
Cadreを活用することで、データを収集するためのプログラム開発や、データベース構築等が不要でデータが使えるようになるので、IT技術者でなくともデータ活用が容易にできるようになります。
Jiraに限らず、ConfluenceやBitbucket等に格納されたデータも収集し、関連付けて活用することができます。
進捗管理の可視化だけにとどまらず、ソースコードやドキュメント等の成果量を定量評価したり、 レビュープロセス(件数や指摘残件の推移等)の情報可視化等、幅広いデータを収集、活用することで、分析の可能性が大きく広がります。
Tableau等のBIツールを活用することで、BIツールの中で異種データソースの結合ができるようになります。手元のファイルや社内データベースとデータを関連付けることで更に分析の幅が広がりますし、 品質の高いビジュアル化が高度なスキルなく実現できるようになります。
プロジェクト管理のデータ活用を今から検討されている方や、過去にトライしたがうまく行かなかった方は、ぜひCadreをご検討ください。
本情報はブログを公開した時点の情報となります。
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