2024年10月08日
生成AI活用で業務改善を図る<リックソフトのユースケース>持田 秀敏 Hidetoshi Mochida
リックソフト開発部のエンジニア、持田です。
2024年の秋現在、生成AIの技術は飛躍的に進歩し、ビジネスの場においても業務効率化や新たな価値創出に大きな可能性を秘めています。すでに生成AIを導入されている企業も多く、数多くのビジネス活用事例を見つけられますよね。私たちリックソフトも、そんな企業の一つです。
既存導入サービスの生成AI機能である「Mircrosoft 365Copilot」や「Zoom AI Companion」はすでに導入済です。これらに加えて、生成AIを使った社内業務改善の余地はないかと可能性を日々模索しております。
今回は、私たちリックソフトが社内向け生成AIを開発し、全社導入した事例についてご紹介いたします。
リックソフトではナレッジ管理ツールとしてConfluence(コンフルエンス)を、ビジネスチャットツールとしてSlackを利用しています。業務に関する情報はほとんどConfluenceにまとめられていますが、日々アップデートされる技術や、導入しているシステムの新機能に関してはConfluenceにまとめきれていないものもあります。
そのため、
「DC版Jiraにある〇〇機能を実現するCloud向けのアプリは●●以外ありませんか?」
「押印申請のアプリのUIが変わりましたね。電子署名を依頼したい場合どこにチェックを付ければいいのでしょうか?」
といった、業務に関わる質問や問い合わせが、Slackのチャンネルに投げかけられています。
質問によっては回答できる担当者が属人化しており、回答者が不在の際、回答を投げかけた人は疑問を解決できず、業務を進められません。
(課題1)一部担当者に業務負荷が集中している。
(課題2)必要な情報を必要なタイミングで得られず、業務効率の低下が懸念されている
この2つの課題を解決するために、社内で浸透しているSlackに生成AIの仕組みを取り入れ、社員の誰もが手軽にAIを活用できる環境を整えたいと考えました。
特定の人に依存せず迅速に回答を得られるだけでなく、生成AIの活用を社内全体に広げ、組織全体のイノベーションの促進や業務効率のさらなる向上を目指しています。
従業員一人ひとりが生成AIを日常業務で活用することで、新しい発想や改善提案が生まれやすくなり、企業全体の競争力強化につながると期待しています。
開発には、OpenAIの言語モデルであるGPT-4oを使用し、AWS上での運用により、スケーラビリティと信頼性を確保しています。
開発チームは、アジャイル手法を取り入れ、ユーザーからのフィードバックを迅速に反映し、短期間で実用的なシステムを構築を実現しました。
自社製のSlackアプリ「AIrick」と名付け、全社員がSlack上で利用できるようにしました。
開発したチャットボット「AIrick」の特徴を紹介します。
AIrickをSlackのチャンネルから利用できるようにしています。
また、Slackのスレッド情報をコンテキストとしてAIが参照できるため、ユーザー同士のコミュニケーション中に生じた疑問をAIチャットボットに質問したり、意見を求めることができます。
ChatGPTのようにAIが生成する回答をSlackに逐一表示するようにしています。
文字数の多い回答の場合でも回答が出力され始めるまでの時間が短くなるため、全社員にとってストレスの少ない設計にしています。
ストリーミングレスポンスを実現するため、Slackメッセージをリアルタイムで更新し、回答がリアルタイムで生成・表示される工夫を行っています。
SlackのAPIにはレート制限が設けられているため、頻繁に編集してしまうと制限に引っ掛かります。そのため、レート管理を行い制限に引っかからない工夫を行っています。
テキスト、画像、PDFやExcelファイルを一緒に処理することができます。
画像から文字を読み取らせるOCRのようなことや、Excelから情報をフィルタリングして抽出するといったことができます。
元々は迅速に回答を得られる環境を整えるために開発したチャットボットですが、AIの汎用性が高いため様々な活用方法が日々見出されています。
その活用例をいくつか紹介させていただきます。
Slackの長いスレッドに突然メンションを受け、「スレッドの頭から会話を追いかけるのが大変」という経験はよくあるケースと思います。
チャットボットはスレッドの情報をコンテキストとして参照し、スレッドの中身を要約してくれるため、過去の会話の流れをすべて読まずとも状況の流れを把握しやすくなります。
上記は、リックソフトのSlackの雑談チャンネルで「台風とコロッケ」が話題になっていたため「なぜ台風が来るとコロッケを食べたくなるのでしょうか?」と聞いてみた結果です。会話の内容や提示されたリンクの概要を学習して、要約を示しています。
会議中にホワイトボードに書いたメモや、手書きのアイデアをスマートフォンで撮影し、その画像をチャットボットに送信します。
チャットボットは画像内の文字をOCR機能で読み取り、テキスト化してくれます。
これにより、手書きの情報を簡単にデジタルデータとして保存・共有でき、情報共有の効率が向上します。
上記は、リックソフトへの行き方を示した画像付きドキュメントをAirick(検証環境)に読ませ(画像左)た結果、得られたコンテンツ(画像右)です。 上記は、リックソフトへの行き方を示した画像付きドキュメントをAirick(検証環境)に読ませ(画像上)た結果、得られたコンテンツ(画像下)です。
生成AIを試験的に利用したり、気軽に試せるように、チャットボットとのダイレクトメッセージ(DM)も利用可能にしています。
ユーザーは個人的にAIに対話型で質問や壁打ちができるようになります。
AIrickのアプリにDMで「ドキュメントを縦横間違えてスキャンしてしまいました。PDF化されたドキュメントの縦・横を変えるにはどうすればいいですか??」と聞いたところ、いくつかの方法を教えてくれました。
チャットボットの開発と並行し、生成AI利用のためのガイドラインを策定し、オンライン勉強会を通じて周知も行いました。
生成AIを業務に取り入れるにあたり、適切かつ安全な利用を促進するためのガイドラインになります。
このガイドラインは、機密情報の保護、AIの適切な活用方法の明確化、法令および社内規定の遵守を目的としています。
社員一人ひとりが安心してAIを活用できる環境を整えることで、業務効率化とイノベーションの推進を狙いとしています。
生成AIを活用した社内向けAIアシスタントの導入により、業務効率化とコミュニケーションの質向上に大きな成果が見られました。
まだ課題は残るものの、継続的な改善を通じて、さらなるビジネス価値の創出を目指していきます。第2回では、リックソフト社内の生成AI利用の今後の展望についてお伝えします。
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