2024年07月04日
自動車開発の新しい流れに迫る【開発手法の変化、アジャイルとウォーターフォールのハイブリッド】後編小田倉晃 hikaru.odakura
--- 前編の記事はこちら ---
自動車業界における開発手法の変革は急務となっており、特にアジャイル開発の導入が注目されています。しかし、ウォーターフォール開発が当然であった製造業で、アジャイル開発の導入には課題がいくつも発生します。
今回は、これらの課題を実際に克服した自動車メーカー複数社の事例を交えながら、課題解決に向けた方法をご紹介します。
<<この記事の目次>>
長年にわたり、ハードウェア開発が主体であった自動車業界では、ウォーターフォール型の開発プロセスが標準とされてきました。すべてのフェーズごとに工程と期日を明確にし、プロジェクトを進めてきました。
そのため、アジャイル開発を導入する際に、既存のプロセスとどのように整合性を取るかが課題となります。
特に、品質管理や安全性が厳しく要求される部分では、アジャイルの柔軟性とウォーターフォールの確実性のバランスをどのようにとるかが問題です。
ある自動車メーカーでは、プロジェクト開発・タスク管理に特化したITツール「Jira」を活用してアジャイル開発とウォーターフォール開発のハイブリッドモデルを採用しました。
具体的には、基幹となる安全機能の開発にはウォーターフォールモデルを適用し、インフォテインメントシステム(IVI(in-vehicle infotainment))などの顧客向け機能にはアジャイルモデルを適用するという使い分けのアプローチを取りました。これにより、品質とスピードの両立を実現しました。
「Jira」には、ウォーターフォールとアジャイルの両方の開発モデルに利用できるテンプレートが標準で用意されており、すぐにプロジェクトを開始することができます。
また、開発手法の異なるすべての作業を1つの画面上に表示することができるため、ハイブリッドモデル採用後も全体の進捗管理や異なるチーム間の作業の依存関係を容易に管理することができました。
上の画面は、Jiraでアジャイル開発(上・オレンジ枠)とウォーターフォール開発(下・黒枠)をハイブリッドで管理した利用例。プロジェクトをまたいだ進捗管理が容易です。
図のように、異なるチーム間の作業の依存関係を把握する図が作成されます。
自動車業界は長年にわたり、ハードウェア開発が主体となって進められました。
エンジニアの仕事のフレームワークもウォーターフォールのスタイルとなっているため、アジャイル開発特有の反復的なプロセスや自己組織化の考え方に適応するのに時間がかかります。アジャイル開発を成功させるためには、単にシステム開発の手法を変えるのではなく、チームメンバーのスキルセットと文化の変革が必要です。
ある自動車メーカーでは、コラボレーションツール「Confluence(コンフルエンス)」を活用してチーム全体のアジャイルトレーニングプログラムを展開しました。
Confluence上にトレーニング資料や実践ガイドを集約し、チーム全員がいつでもアクセスできる環境を整えました。
さらに、個々のメンバーのスキルを可視化し、その情報をもとに以下のようなアジャイルのプラクティスを実践しました。
ペアプログラミング:
コードレビュー:
これらの活動により、知識の共有が促進され、各メンバーが必要なスキルを効果的に習得することができました。また、定期的なワークショップや振り返りを通じて、アジャイルの理念と実践に関する理解を深め、組織全体の文化変革を推進しました。
上記のように、アジャイルを取り入れるために必要な情報をConfluenceにまとめました。
スキルマップを作成し、各メンバーのスキルを可視化しました。
こちらの企業では、Confluenceを利用する前はプロセスやツールのマニュアルをエクセルで管理し共有していましたが、設計や要件をまとめたドキュメントをConfluenceに集約したところ、特に以下の点が改善し生産性が向上しました。
また、「Jira」はアジャイル開発に適した機能やレポートが充実しています。
「Jira」を活用することで、アジャイルチームは自動的に作成されるバーンダウンチャートやベロシティチャートなどのレポートを利用して、チームの進捗を可視化し、継続的な改善を実現しました。
これにより、チーム全体のパフォーマンスが向上し、アジャイル開発のメリットを最大限に引き出すことができました。
自動で作成されるバーンダウンチャートで、作業が予定通り進んでいるか確認します。
スプリント単位で、計画に対してどの程度作業を完了することができたのかをベロシティチャートで確認します。
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アジャイル開発では、リアルタイムのフィードバックと迅速な改善が重要です。しかし、大規模な自動車開発プロジェクトでは、ステークホルダーが非常に多いため、ステークホルダーからのフィードバックを迅速に収集し、反映することが難しい場合があります。フィードバックのフォーマットもバラバラで、フィードバックの優先順序を管理することが難しいです。
ある自動車メーカーは、この課題を解決するため、ステークホルダーからのフィードバックの収集と追跡ができるよう体制を整えました。ステークホルダーがスプリントレビューに確実に参加するようスケジュールを調整し、適切なフィードバックがしやすいよう資料やデモの準備も事前に行うルールにしました。この時にも活用されたのは、JiraとConfluenceです。
各スプリントの終わりに行われるスプリントレビュー(フィードバックを得るイベント)で、開発チームは収集したフィードバックをConfluenceやJiraのチケットに記録するようにしました。そして、次のスプリントでそのフィードバックに基づく改善を行うことで、継続的な品質向上が実現したのです。
Confluenceには、導入後すぐにアジャイル開発に活用できるテンプレートが豊富に用意されており、チーム全体が情報を整理して有効活用できます。また、記載した情報を元にワンクリックでJiraのタスクチケットを作成できるため、議事録上のTo Doを漏れなく実行しやすくなります。
自動車産業は厳格な安全、品質、環境基準に従う必要があります。これらの規制に準拠しつつ、アジャイルなプラクティスを導入することは難しいかもしれません。なぜなら、アジャイルは柔軟性と速度を重視し、ドキュメントの作成があとまわしになりがちだからです。国際的な法規制が数多ある自動車業界では、スピーディーなアジャイル開発を進めると同時、必要な証跡やドキュメントを確実に残すことが必須です。
あるグローバルな自動車メーカーでは、Jiraの確実な履歴保持やトレーサビリティ機能を活用しています。開発の各段階で法的に必須な文書や承認を取り込むワークフローを組み込んでいます。さらに、Confluenceを規制に関連する文書や監査記録の保管場所として利用しています。この企業の従業員は、通常通り作業をこなすことにより、自動的に必要な証跡を残すことができています。
Jiraを利用する前はエクセルを利用しており、承認時の押印を含むプロセスに時間が取られてしまっていましたが、Jiraの導入により承認にかかる時間を大幅に削減しました。
リックソフトは、これまで自動車メーカーやサプライヤー企業のJiraやConfluenceを導入支援してまいりました。
自動車メーカー・サプライヤーのアジャイル開発の導入は、多くの課題を伴います。リックソフトは、お客様とこれらの課題を解決しながら体制を変えていくアジャイル変革をサポートしてきました。
今後も引き続き、具体的な事例とともに課題解決の方法をご紹介していきます。
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