2023.07.31更新日:2024.03.29
ITサービスマネジメントとは、ITサービスを効率よく適切に管理するための仕組みです。
いまや企業がビジネスを推進するうえで必要不可欠となっているITサービスの提供を管理する仕組みや枠組みを指します。顧客(ITサービス利用者)のニーズに合ったサービスを安定して提供するには、ITIL(アイティル)と呼ばれるガイドラインに準拠したものの利用をおすすめします。
本ページでは「ITサービスの品質を向上したい」「ITサービスの運用を効率化したい」と考えている方のために、ITILとはどういうものなのか、ITサービスマネジメントシステムにおいてITILがもたらすメリットや重要性についてご紹介します。ぜひ最後まで読んで、ITILに準拠したITサービスマネジメントシステムの導入を検討してみてください。
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ITILとは「Information Technology Infrastructure Library」の略で、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス(成功事例)をまとめた書籍群、いわゆる教科書のようなものです。
本来ITサービスマネジメントは顧客満足度を高める目的で、試行錯誤をしながら業務効率の改善やサービスの向上を行っていくものですが、ITILにはすでにそれらの成功事例がまとめられています。実務マニュアルとして活用したり、導入時のガイドラインとして利用したりできるため、ITサービスマネジメントの導入および運用コストを大幅に削減することができます。
例えばITサービスマネジメントにおいて重要な「インシデント管理」「サービスリクエスト管理」なども、ITILを活用することで、より効率的に行うことができるでしょう。
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ITILは1989年に英国で経済不況を打破するため、ITマネジメント改革の一環として成功事例をまとめたのが始まりです。
最初のバージョンであるITIL®V1がリリースされ、その後、変化していくITサービスに対応するために、ITILもV2、V3とバージョンアップが行われてきました。
現在はITIL®4が最新版としてリリースされており、DXの促進やAI、ビッグデータといった新たな技術に対応できるよう、合計6冊の書籍と34冊のプラクティス集から構成されています。
DXの促進など時代の変化に合わせてITIL®V3はITIL®4として刷新され、DX時代に必須となる、アジャイルやDevOps、リーン、ガバナンスといった4つの要素が新しく追加されています。また基本となる考え方も変化しており、V3以前では提供するサービスに焦点を当てていましたが、ITIL®4では「サービスプロバイダーとサービス消費者がともに価値を共創していく」ことを目的とする考え方に変わりました。
その他にも、ITサービスマネジメントにおいて重要になるインシデント管理・問題管理・ナレッジ管理などプロセスと呼ばれていたものを、「プラクティス」と定義した点にも変化があります。ITIL®4では「プラクティスを組み合わせて運用することこそがITサービスマネジメントの効果を最大化させる」としています。
先述のとおりITIL®4は合計6冊の書籍と34冊のプラクティス集で構成されており、それらは「一般管理プラクティス」「サービス管理プラクティス」「技術管理プラクティス」の3つに分類することができます。それぞれどのようなプラクティスがあるのか順に見ていきましょう。
一般管理プラクティスはビジネスマネジメント領域から生まれ、ITILに採用された用語です。一般管理プラクティスには以下の14個のプラクティスが該当します。
サービス管理プラクティスはサービスマネジメント業界で発展した用語です。サービス管理プラクティスには、以下の17個のプラクティスが該当します。
技術管理プラクティスは技術管理の領域から生まれ、ITサービスマネジメントに適用された用語です。技術管理プラクティスには以下の3つのプラクティスが該当します。
成功事例であるITILに沿ったITサービスマネジメントは理想的であるものの、実際には多数のプラクティスを最初から全て導入することは難しく、具体的な導入方法を自社内で検討するのも効率的ではありません。そこで手助けになるツールが、ITILに準拠したITサービスマネジメントシステム(ITSMS)です。ITILに準拠しているという認証「PinkVERIFY™」を受けているITサービスマネジメントシステムの利用がおすすめです。
ITサービスマネジメントシステムの導入を行う際は、注意点やリスクの回避策を考慮しておきましょう。準備が足りないまま導入してしまうと以下のような失敗につながる恐れがあります。
こういった状況に陥らないためには、ITIL®4で定義されている従うべき原則に配慮することが重要です。
従うべき原則 | 説明 |
---|---|
価値に注目する | 利害関係者にとっての価値に、それが直接的であろうと間接的であろうと、関連付ける必要があります。「価値に着目する」という原則には、顧客とユーザの経験を含む多くの観点が内包されます。 |
現状からはじめる | 新しいものをゼロから開始、また構築するのではなく、すでにある利用可能なものを活用することを検討します。現行のサービス、プロセス、プログラム、プロジェクトおよび人材などの中に、求められる成果を生み出すために利用できるものが十分に存在している可能性があります。現状に直接目を向けて調査し、完全に把握する必要があります。 |
フィードバックを元に反復して進化する | 何もかもを一度に片づけようとしてはいけません。大規模な取り組みであっても、反復的な活動によって達成する必要があります。作業をより小さく扱いやすいセクションに分割し、実行と完了をタイミングよく行えるようにすることで、一つ一つの取り組みに集中しやすくなります。 それぞれの反復の実行前、実行中および実行後にフィードバックを利用して、状況が変化している場合でも、適切なアクションを集中的に実行できるようにします。 |
協働し、可視性を高める | 境界を超えて協力することで、より大きな賛同が得られ、達成目標への関連性が高まり、長期的な成功の可能性が高まります。達成目標を実現するには、情報、理解および信頼が必要です。作業および結果を可視化し、隠れた意図を入れないようにし、情報を可能な限り共有する必要があります。 |
包括的に考え、取り組む | サービス、またはサービスの提供に使用される要素が、単独で存在することはありません。組織が、サービスの一部ではなく全体に対して取り組まなければ、サービス・プロバイダとサービス消費者が得られる成果は貧弱なものになります。 内部顧客および外部顧客に結果をもたらすには、情報、技術、組織、人材、プラクティス、パートナ、合意を効果的かつ効率的に管理し、動的に統合する必要があります。定義された価値を提供するには、こういったすべてのことの調整が必要になります。 |
シンプルにし、実践する | 価値をもたらさない、あるいは有用な成果を生み出さないプロセス、サービス、アクション、測定基準は、除外排除してください。プロセスまたは手順のステップは、達成目標に必要な最小限に留めます。結果をもたらす実践的なソリューションを生み出すために、常に成果ベースの思考を使用します。 |
最適化し、自動化する | あらゆる種類のリソース、特に人材を最大限効果的に利用すべきです。無駄をすべて排除し、技術で解決できることには技術を利用します。そうすることで人が関わるのは、本当に価値に貢献する場合に限ります。 |
単にシステムやサービスを変えるだけでなく、それを利用する人の教育や、システムを利用した業務の進め方の改善などを並行して進める必要があります。
ITILに準拠したITサービスマネジメントを行いたいが、何から始めて良いのかわからないという方は、まずはサービスデスクの改善・導入から始めましょう。
ITILではITサービスマネジメントの核となる機能を「サービスデスク」と定義しています。
サービスデスクは、サービスリクエスト管理、サービスレベル管理、インシデント管理などのプラクティスが必要です。サービスデスクの改善を行うことで顧客満足度の向上にもつながります。
「Jira Service Management」ではITILに準拠したインシデント管理・問題管理・変更管理・構成管理などを行うことができるヘルプデスクシステムを提供しています。ヘルプデスク業務に必要な機能が網羅されており、「問い合わせ対応の時間の短縮」や「問い合わせ対応の漏れを防ぐ」といった従来の課題を解決することができます。
ITILに準拠したITサービスマネジメントの一歩を踏み出したい方は、無料トライアルもあるのでぜひご検討ください。
【監修】
リックソフト株式会社 プリセールス担当
阿部真紀子