2023.11.02更新日:2024.05.02
ITサービスマネジメントにおける成功事例やフレームワークを書籍化した「ITIL(アイティル)」は、今やIT事業における教科書的な位置付けとなっており、世界中の企業に導入されています。
この記事ではITILの基礎知識について解説します。2019年にリリースされた最新規格である「ITIL4」の内容や、ITILの認定資格である「ITIL Foundation」についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
<事例紹介>
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ITIL® (Information Technology Infrastructure Library)とは、ITサービスを適切に管理し、継続的に改善していく上での成功事例やフレームワークをまとめたガイドラインのことを指します。
1989年にイギリスで初版が発行されて以来、時代の変化・技術の進歩に応じて改定が繰り返されています。(2024年1月現在) 最新バージョンは、2019年に発行された「ITIL4」です。
近年、ITサービスの重要性は日に日に増しており、企業活動をする上でもITサービスを上手に運営し、消費者のニーズに合ったサービスを提供していくことは必要不可欠です。この活動のことを、ITサービスマネジメント(ITSM)と言います。
とはいえ、“効果的なITSMを実践する”といっても、そのやり方は様々です。ITSMは多様な側面から、そのサービスや組織に応じたやり方を模索していく必要がありますが、それなりの労力がかかります。
そこで参考になるのがITILです。ITSMを実践していく上でのベストプラクティスやノウハウがまとめられているため、ITILを参考にすることで、運営の効率化やサービスレベルの向上を実現することができます。
実際に、世界中の政府機関や大手IT企業、システムインテグレータ等で、ITILに基づくサービスが展開されており、ITILの内容はグローバルスタンダードとなりつつあります。
ITILはあくまでガイドラインであり、絶対に守らなければいけないものではありません。しかし、各種成功事例が基となっているため、参考になる部分が大いにあります。 自社の状況も踏まえつつ、積極的に考え方を取り入れていきましょう。
ITILの考え方を自社のITサービスに取り入れるメリットは以下が挙げられます。
いずれもITサービスを提供する上で大切なポイントであり、かつ、ゼロから仕組みを考えていくのは難しい部分になります。しかし、ITILを基に検討していくことで、より良いサービスの提供に繋げられます。
ITILは時代とともにアップデートされていますが、その最新バージョンが2019年にリリースされた「ITIL4」です。
ITIL4は、近年活用が広がっているクラウド・IoT・AI・機械学習・ブロックチェーンなどの新しい技術から生み出されるビジネスチャンスを最大限に活用するため、ITSMも進化していく必要がある、という考え方に基づきアップデートされました。
そのため、アジャイルやスクラム、DevOpsなどの新しい開発形態を取り入れている組織にも適用可能なフレームワークが多く掲載されています。
では、バージョンアップ前のITIL3と比べ、ITIL4はどのような点がアップデートされたのでしょう?
ITIL3とITIL4で大きく変化した考え方について、大きく次の3つがあります。
大まかには、ITIL4では、サービスマネジメントを単なる“サービスの提供”ではなく、“サービスをより良くする活動”の一環として多角的に捉えていると言えるでしょう。
ツール導入で自然とITILのお作法に則った運営ができるようになった「JALインフォテック」の事例を読む!ITIL4で登場したサービスマネジメントの考え方には、新しい概念も多く含まれています。
ここからは、代表的なITIL4の概念について説明します。上記で説明したアップデートの内容と合わせて、ITIL4の特徴を理解しましょう。
サービスバリュー・システム(SVS)とは、サービスマネジメントの全体像をモデル化したもので、ITIL4の大枠となる概念です。
次の4つの要素から成り、これらが互いに連動して機能することで、価値の創出が実現する、という考え方です。
ちなみに、旧バージョンのITIL3では、「戦略→設計→移行→運用→継続的改善の順番にフェーズを移していく」というサービス・ライフサイクルのアプローチが大枠の考え方となってました。
ツール導入で自然とITILのお作法に則った運営ができるようになった「JALインフォテック」の事例を読む!サービスバリュー・チェーンとは、サービスバリュー・システムの中心的な要素です。
サービスの開発とマネジメントに関する活動を体系化したものであり、以下6つの要素で構成されています。
旧バージョンのITIL3では、ITSMを5つのライフサイクルフェーズ(戦略・設計・移行・運用・継続的改善)として捉えていましたが、ITIL4ではサービスバリューストリーム(SVS)として上記の6つの要素に置き換えられ、価値を実現していくための重要な構成要素として捉えられています。
ツール導入で自然とITILのお作法に則った運営ができるようになった「JALインフォテック」の事例を読む!プラクティスとは、ITSMを行う組織に求められる具体的な実践項目のことを指します。
ITIL4では、ITIL3の「プロセスと機能」を「プラクティス」として再定義しました。ITIL4ではプラクティスは「一般的マネジメントプラクティス」「サービスマネジメント・プラクティス」「技術的マネジメントプラクティス」の3つのカテゴリに分類され、以下のように合計34個存在しています。
バリューストリームとは、ITIL4の「4つの側面」の内の1つであり、顧客のニーズから価値を生み出すまでの一連の手順のことを指します。
バリューストリームは、前述したプラクティスの組み合わせで構成されます。各プラクティスを通じて顧客の「需要」が「価値」に変換されていくことから、このバリューストリームを可視化し、プロセスの有効性を分析することも多くあります。
ITIL4 Foundation(アイティル・ファウンデーション)とは、ITIL4の認定資格の一つであり、ここまで説明してきたITIL4に関する基礎知識を保有していることを証明する世界共通の資格です。
日本をはじめ、世界180カ国・25言語で試験が実施されているメジャーな資格となっており、日本語にも対応しています。
この資格を取得することでITサービスマネジメント及びITILについての知識レベルを証明できます。また、一般的には資格の取得のみでは意味がないと考えられがちですが、ITILは成功事例やフレームワークをまとめたガイドラインですので、資格取得のための勉強を経ながら、実際の業務においても世界標準の考え方をベースにITサービスの改善・検討ができるようになります。
そのため、この資格を持った社員が増えるとDX化を加速させやすい組織へと繋がることから、社員がITIL認定資格を取得した場合に資格手当を支払う企業もあります。上司・部下・同僚への受験をおすすめできる資格と言えるでしょう。
ITIL4 Foundationは、日本国内では「プロメトリック」社にて受験可能です。
<試験概要>
試験名 | ITIL® Foundation Version 4 (Japanese) |
---|---|
受験料(税込) | 67,793円 |
試験時間(内、チュートリアル) | 77分(17分) |
試験実施日 | 随時 |
試験方式 | CBT (Computer Based Testing) |
出典:
PeopleCert/ITIL(R) ファンデーション試験|試験一覧・検索|受験者の方|CBT/IBT 世界水準の試験運営|プロメトリック
CBT方式ということで、時間などを調整して受験しやすいのも大きなメリットですね。
ITIL4 Foundationの上位資格もあるため、大規模な組織でITサービスマネジメントを実践する必要がある人や、ITサービスマネジメントを極めたいと考えている人はさらに上のレベルにチャレンジしてみてください。
ここまで、ITILについて解説してきました。
ITILは、ITサービスを適切に管理し、継続的に改善していく上での成功事例やフレームワークをまとめたガイドラインのことで、世界中で活用されています。自社の状況やサービスに合わせて考え方を上手く適用させることで、より良い価値の提供につながると言えるでしょう。
最新バージョンである「ITIL4」の内容・考え方の理解をより深めるには、認定試験「ITIL Foundation」に向けて学習していくのがおすすめです。興味を持たれた方は是非取り組み、実践へと繋げてください。
最後に、Ricksoftでは、ITSMソリューション ソフトウェアであるAtlassian社の「Jira Service Management」を販売しています。
これは、PinkVERIFY ITIL 4認定を取得している製品です。
アトラシアン(Atlassian)製品一覧 | リックソフト
また、ITIL関連の資格を持った専任スタッフが多くおり、大企業への導入実績も豊富ですので、ITILの考え方を自社サービスに適用したいと考えている方は、是非製品ページをご確認ください。
【監修】
リックソフト株式会社 プリセールス担当
阿部真紀子