2023.11.10更新日:2024.04.12
社内・チーム内で保有する知識や経験などのノウハウを、可視化できる組織運営をしたいという方に、知っていただきたいのが「ナレッジマネジメントツール」です。ナレッジマネジメントツールとは、チームの形式知・暗黙知を可視化し、組織に共有するITツールです。
この記事ではナレッジマネジメントツールの基礎知識や導入するメリット、注意点について解説します。
ナレッジマネジメントツールの活用でノウハウを可視化し、さらに組織を発展させていきたいと考えている方はぜひ最後まで読んでみてください。
そもそもナレッジマネジメントとはなんでしょうか。直訳するとナレッジ(Knowledge/知識)をマネジメント(Management/管理)で、組織が保有する暗黙知を含んだ知識資源を組織全体で最大限活用するのための取り組みと定義されます。知識経営とも言われています。1990年代に一橋大学の野中郁次郎が提唱した「知識創造理論」を発端にしている考え方です。
かつて日本で終身雇用が当たり前となっており、部署や部門の知識は上司から部下に、オフィスや職場、工場で脈々と受け継がれてきました。しかし雇用の流動性が高くなり、中途採用が珍しくなりました。
また、リモートワークやフレックス制という多様なライフスタイルに合った働き方を実践する企業が増え、「メンバーが、全員、同じ場所で、同じ時間に働く」というのが必須ではなくなってきました。
そこで、物理的・時間的に離れた場所にいるメンバー同士の知識(ナレッジ)を引き出しあった働き方を実現させるニーズが高まってきています。
リモートワーク・ハイブリッドワークとともに、業務用チャット(Slack、Teams、LINE WORKSなど)を使うのが当たり前になってきました。中には、こういったツールで情報や進捗を共有したり、過去の質疑応答をさかのぼったりしてナレッジシェアが可能という考えもあります。
チャットツールは「フロー型」の情報共有ツールに対し、ナレッジマネジメントツールはナレッジを「ストック」することにフォーカスを当てています。ナレッジマネジメントツールは情報の検索機能やAIによる要約機能があるケースがあります。
ナレッジマネジメントツールは、個々の社員がもつ知識や経験、暗黙知、ノウハウを"形式知化"し、組織全体に共有することで、組織内の情報共有を支援するためのシステムやソフトウェアの総称です。「ビジネスにおける情報を社内の部署間でスムーズに活用できるように管理・共有する」というナレッジマネジメントを実現するためのツールであり、しばしばナレッジ管理ツール、ナレッジ共有ツール、またナレッジ蓄積ツールとも呼ばれます。
形式知化とは、組織や個人が持つ非公式で言語化されていない知識を、文章や図表などで共有可能でアクセスしやすい形にすることを意味します。個人が培った経験やスキル、技術など、組織の利益につながる情報全般(=「ナレッジ」)を形式知化することで、ある社員が無意識に行っている効果的な活動を、見える情報として保存・共有することができるようになります。
暗黙知を形式知化したケース:
ナレッジマネジメントに使えるツールは、目的や利用用途に応じて以下の4種類に大別されます。
社内FAQ型のナレッジマネジメントツールは、業務効率化、業務標準化、人材育成などに役立てることを目的に、社内の専門知識をデータベースにまとめたものです。社内専用のyahoo!知恵袋のような使い方をします。
社内の専門知識を有する人同士でコラボレーションが発生し、新しい知見が生まれることもあります。ビジネスチャットでもこういった質問・回答は随時起こりえますが、ビジネスチャットは情報が流れていってしまうため、その場限りの情報・回答になりがちです。
将来同じような質問をする人が誰かの回答を待たず過去のFAQから回答を知ることができます。
ユースケース
取り扱い製品の機能や手続き、納品方法についての疑問をQA形式で聞いておくと、わかる人が回答してくれる。同じ疑問に直面したほかの社員がそのFAQを参照して疑問を解消することができます。
マニュアル・手順書型のナレッジマネジメントツールは、画像や動画を用いながら業務のマニュアルや手順書をまとめたものです。これにより業務のスピード感や完成度、サービス品質を人に依存せず担保でき、企業の信頼性を高めるのに役立ちます。マニュアル・手順書型のナレッジマネジメントツールが有効なのは、一定の決まった手順が存在するナレッジを共有する場合です。
例:
事例共有型のナレッジマネジメントツールは、お手本となる社員のスキルや行動パターン、思考パターン、書類の記入例、問題発生時の対応モデルケースなどを他の社員に共有するものです。ベストプラクティス(好事例)を共有することで、社員の能力を全体的に底上げし、組織全体のマインドセット、スキル、パフォーマンスの向上に寄与します。
例:自社で開催したセミナーや展示会等のイベントを振り返り
→今後同様のイベントを開催するときに参考にすることが可能です。新メンバーの入社前に期間に行われたトライアンドエラーの履歴を知ることができます。
例:決定事項が可決されるまでの経緯をオープンに
「なぜこんな風に決まったんだっけ?」と振り返る際や、今後、似たようなことが起きたとき、車輪の再発明のような時間の使い方をせずに済みます。
ナレッジ分析型のツールは、集積したナレッジを分析することで、経営戦略や事業戦略の策定に役立てることができます。意思決定や判断の確度を高めるのに役立ちます。
例えば、組織内の営業データや市場のトレンドなど大量のデータを集積しておき、データウェアハウスやデータマイニングなどの専用ツールを用いて分析・共有することで、経営方針の意思決定等に役立てることができます。
ここでは、ナレッジマネジメントツールが保有する機能について解説します。データベースやグループウェアなど複数の機能を兼ね備えている場合もあります。
データベース(社内Wiki)は、社内の専門知識や業務マニュアルなどをデータベースとして整理・編集して共有する機能です。多くの人のナレッジをデータベース化することで、業務効率化、業務標準化、人材育成などに役立てることができます。
チームコラボレーションツールの有効活用で
エンジニアおよびバックオフィス部門のナレッジ共有を実現
ヘルプデスクは、社内で発生した質問に対して、社員同士で回答しあえる機能を提供します。FAQツールやチャットボットなどが代表的です。
ナレッジマイニングは、ユーザーが探したい情報をナレッジの中から検索できる機能を提供します。一般的な文書データベースや文書管理システムは検索対象はファイル名ということが多いですが、ナレッジマネジメントツールは「ファイルの本文」「添付ファイルの文書」も検索対象になっており、ユーザーは求めている情報にアクセスしやすくなります。
また、AI技術を用いて組織内に散在している付加価値の高い情報を抽出したり、要約してくれるツールもあります。
次に、ナレッジマネジメントツールを導入することによるメリットについて解説します。
技術やノウハウをナレッジとしてマニュアル化しておくことで、業務を誰でも再現可能な状態にできます。例えば、休職者や退職者が出た際にも、業務の進め方などが共有されていれば、ほかの社員がカバーできます。中途採用の新入社員でも、マニュアルを参照しながら業務を受け継ぐことができます。
また、マニュアルがあることにより、現在の業務レベルを落とさず社内で担当者変更がしやすくなり、人材の流動性が高まる等のメリットが生まれます。
参考:
組織パフォーマンスの継続的な最大化を目指して、
カルチャーをより強く醸成する基盤としての社内プラットフォームを刷新
優れた技術やノウハウ、マインドセットなどをベストプラクティスとして共有することで、社員全体の能力を底上げできます。ベテラン社員の技術やノウハウを共有することで部門を越えた情報共有が可能となり、人材育成や社内コミュニケーションの活発化に役立ちます。
ナレッジ検索機能などを活用することで、膨大な社内ナレッジの中から必要な情報にすぐにアクセスできます。これにより、工数削減、業務効率化、生産性向上などを達成することができます。
業務マニュアルや知識がナレッジマネジメントツールに保存されていれば、新入社員や他の社員はそれぞれのペースで必要な情報を好きなタイミングで何度でも簡単に調べることができます。その結果、初めて取り組む業務でも、他の人から教わる場を設ける必要がなくなるため、引継ぎコストを削減できます。
例えば、出張・交通費の精算方法、会議室のモニタのつなぎ方、といった一般的な業務マニュアルをナレッジマネジメントツールに入れておけば、新入社員でも必要な手順を簡単に確認できるため、各社員が問題を自己解決することができ、庶務関連の説明の手間を省くことができます。
ナレッジマネジメントツールは、複数のデータベースやサーバを連携してデータ抽出できる機能を提供します。これにより、分散したデータを手動で統合する手間を削減し、効率的なナレッジの収集が実現可能となります。
複数のExcelで過去の検討資料を残していたり、社内のポータルサイトが散在している、といった現場だと、ナレッジを探すにあたっても「どこを探せばよいのか」という課題に直面する場合もありますが、複数のデータベースを横断してナレッジを探すことができれば、この問題も解消されます。この場合は、社内で既に使っているMicrosoft TeamsやGoogle driveなどの各種ツールとの連携も、1つのポイントになります。
顧客からの意見や満足度などをナレッジマネジメントツールで共有管理することで、業務の標準化が実現し、顧客満足度の向上に繋げることができます。
例えば、顧客からの問い合わせに関するナレッジが共有されている場合は、共有されている意見や過去の事例に基づいて対応することでスピードが早くなったり、品質が均質化されます。
また、顧客の声をナレッジ化することで、商品開発や改善にも役立てることができます。例えば、カスタマーサポートなどの営業部員が顧客の声をナレッジ化し、開発部門がその共有されたナレッジを商品開発に反映させることで、サービスレベルの向上が可能になります。
ナレッジマネジメントツールは社内SNSとして利用することも可能です。個々の社員が文章や画像で投稿できる機能を提供することで、コミュニケーション活性化や情報共有の場として利用され、知識を共有しやすくなる効果があります。
ナレッジマネジメントツールはグループウェアとして利用することも可能です。。掲示板機能、メッセージ機能、スケジュール管理機能、ファイル共有機能などを使ってナレッジ共有を行いつつ、複数人での共同作業やコミュニケーションをサポートすることができます。
一方で、ナレッジマネジメントツールを導入する際には、いくつか注意点があります。ここではその注意点について解説します。
ナレッジマネジメントツールの導入には手間とコストがかかります。
導入の際には費用対効果を考えることが重要です。導入コストを抑えつつナレッジマネジメントを始めるために、ツールではなくマニュアルをまとめたドキュメントを作成する手法も検討できますが、ナレッジマネジメントに特化したールに比べて管理や活用に工数や手間がかかることに留意する必要があります。
社員がナレッジを共有したとしても、営業成績のように効果をはっきりと出すことができない場合があります。
効果が見えにくいため、社内でのナレッジ共有が浸透しない可能性がある点に留意する必要があります。
対策としては、ナレッジ共有を促進する仕組み作りや、ナレッジを共有した社員の貢献度を評価する仕組みの構築が考えられます。
一方、製品管理者など一部の権限を持つユーザーのみ「どのスタッフがどれくらいページを作成したか」「一番見られているページは何か」「検索されているキーワードは何か」など社内での利用状況を可視化できるツールもあります。
導入後、費用対効果の説明を求められる際、こういった機能がついているものを選ぶとレポート作成が楽になります。
新しいツールの使い方を覚えるのには時間がかかります。
また、使い方を覚えたとしても、ナレッジ共有の優先順位が低く、持っているナレッジを共有しないケースも多いです。
例えば、ツールが導入されてもログインすらしないケースや、ログインしたとしても、他の人が書いたナレッジを見るだけで自分がナレッジをシェアするという発想がないケース、知識の共有自体を嫌がるケースもあります。
ナレッジマネジメントツールを効率的に活用するためにはこのような組織の体質を変えることとセットで考える必要があるため、導入・定着にエネルギーを要するケースもあります。
対策としては、会議の議事録などルーティン業務にナレッジマネジメントツールの利用を導入するなど、接点を作る仕組みづくりが必要です。また、人事評価制度にナレッジマネジメントツールの活用度を組み込む、というのも一つの方法でしょう。
一方、社員数が急拡大し、毎月何十人もオンボーディングしている企業では、新しい組織の体質をオンボーディング中にツールを受け入れるので、効果が得られやすいこともあります。
参考:
組織パフォーマンスの継続的な最大化を目指して、
カルチャーをより強く醸成する基盤としての社内プラットフォームを刷新
ナレッジマネジメントツールを選ぶ際には、以下の4つのポイントを確認することが重要です。
いきなり全社でツールを導入すると、運用ルールを作成するのが大変だったり、定着までに時間がかかったりと、定着に至るまでのリスクが大きいです。
そのため、まずは特定部門だけでテスト運用し、徐々に活用範囲を広げていく、といった導入の仕方がおすすめです。一部での成功事例を見て、まねしたいという部門が増えて横展開がしやすくなります。
ユーザー数によっては無料で利用できたり、無料トライアル期間がある製品を選ぶと、テスト運用後に社員からの意見を集めて時間をかけて体制を整えることができるため、比較する際のポイントにしましょう。
リモートアクセスできる製品を選ぶことで、在宅勤務時や出張先からでも必要な情報にアクセスできます。
近年の社会情勢や働き方改革の流れを鑑み、遠隔アクセスできるツールを選んでおくと安心です。
ナレッジマネジメントツールには、顧客情報や社員の情報など社内機密情報なども含まれるため、セキュリティの強度を確認することが重要です。情報漏洩や不正アクセスを防ぐために、セキュリティ対策が十分に施されており、アクセスログも保管できる製品を選びましょう。
自社で必要とする機能が備わった製品の中から、操作が簡単でUI(操作画面など)が使いやすい製品を選ぶことも重要です。使いにくいツールは社員に浸透しづらく、導入効果を得にくくなります。誰でも直感的に使える製品かどうか、というポイントを意識しましょう。
ナレッジマネジメントツールは、企業内でのナレッジの収集、整理、共有をサポートする重要なツールです。
自社に合ったナレッジマネジメントツールを選択し、適切に導入・活用することで、業務の効率化や社員全体のスキル向上、顧客満足度の向上など多くのメリットを享受できますので、ナレッジマネジメントについて課題を感じている場合は、是非導入を検討してみてください。
リックソフトでは、Confluenceという情報共有ツールを取り扱っています。Confluenceは、社内ポータル、ミーティング議事録、日報や月報管理、業務マニュアル共有、開発ドキュメント管理など様々な用途に活用できる業務効率化ツールの一つであり、社内ナレッジの蓄積・検索・共有にも適している機能豊富なナレッジ管理プラットフォームとして広く利用されています。
Confluenceは国内外合わせて75,000以上の利用者を抱えるグローバルスタンダードなビジネスサービスで、ナレッジ管理、社内Wikiとしての役割に適していて「テレワークでも使いやすいチームコラボレーションツール」として人気です。Confluenceの特徴を紹介します。
導入事例も豊富にありますので「どのように定着させていけばいいかわからない」という場合も、お気軽にお問い合わせ下さい。
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自社のニーズに合わせて、最適なナレッジマネジメントツールを選び、組織内でのナレッジ共有を強化しましょう。