チームコラボレーションツールの有効活用で
エンジニアおよびバックオフィス部門のナレッジ共有を実現
株式会社みんなの銀行
ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社
ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社は、日本初のデジタルバンクである「みんなの銀行」のシステム開発・保守を担う、株式会社ふくおかフィナンシャルグループのシステム開発子会社である。2021年1月にみんなの銀行システムの本番稼働を開始し、同年5月28日には、みんなの銀行がお客さま向けサービスの提供を開始している。そんな同社だが、BaaS(Banking as a Service)プラットフォームの開発を進める中で、エンジニア間で効率的に情報共有できる仕組みが必要になっていた。そこでコンテンツコラボレーションツールである「Confluence」を導入し、社内に分散する情報の蓄積に取り組んだ。Confluence導入の背景と効果について話を聞いた。
ゼロバンク・デザインファクトリーは、ふくおかフィナンシャルグループの100%出資子会社で、「みんなの銀行」のシステム開発会社である。みんなの銀行は「ゼロベース」で銀行の将来像を追求することをコンセプトにしており、従来の銀行が提供するサービスを、デジタルネイティブなアプローチで Re-Define(再定義)し、Re-Design(再設計)する手法で、目的の達成を目指している。
(取材対象者)
ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社
CIO Officeグループリーダー 稲倉 直也氏(株式会社 みんなの銀行兼務)
欧米諸国を始めとした世界的なオープンバンキングの流れを受けてBaaS(Banking as a Service)を提供する金融機関が日本国内でも複数登場している。みんなの銀行もその1つである。
ゼロバンク・デザインファクトリーはみんなの銀行のシステム開発、保守を行うとともに、BaaSプラットフォームを開発し、2022年11月に提供を開始。このBaaSプラットフォームはみんなの銀行で利用しており、金融業界向けセキュリティ規格「FAPI(Financial-grade API)コンプライアンス」に国内の銀行で初めて対応。非金融事業者がBaaSプラットフォームを活用することにより、自社サービスに金融機能を直接取り込むことが可能になる。
なおBaaSとは、銀行をはじめとする金融機関が提供している金融機能(預金、融資、為替など)を、一般事業者向けにAPIとして提供するものだ。APIとして利用できるため、サービス利用事業者は自社で設備を整えることなく、自社サービスとして金融機能を提供できることとなる。本来、金融機関以外が金融機能を提供する場合は指定の資格や免許といったものが必要になるが、BaaS利用ではこれらが不要になり、多くの事業者が金融サービスを提供しやすくなる。
このようなBaaSプラットフォームを含めて数多くの開発案件をこなすゼロバンク・デザインファクトリーだが、外部を含めエンジニア同士で気軽に情報共有できる仕組みが整っていなかった。また現場からも、社内に分散する情報を1つのプラットフォームに集約し、エンジニア間でナレッジを共有できるツールを導入してほしいという要望が挙がっていたという。
当時の課題について、ゼロバンク・デザインファクトリー CIO Officeの稲倉 直也氏は次のように語る。
「これまで開発を進めるにあたってはチャットツールを用いていましたが、それでは情報のストックが難しく、必要な情報にすぐにたどり着けないといった課題が生じていました。そこで現場からテキストベースでだれもが情報にアクセスして共有でき、なおかつ蓄積も可能となるツールを使いたいという意見が挙がり、ツールの選定を始めることになりました」(稲倉氏)
さっそくツールの比較検討を開始したゼロバンク・デザインファクトリーでは、現場からの意見を積極的に取り入れ、最有力候補としてConfluenceを選定した。
「当社にジョインしたエンジニアの中に、前職でConfluenceを活用していたというメンバーが数多く在籍しており、その方々から強く推薦を受けました。他社製品も候補に挙げ、使いやすさや共同編集機能の有無などを総合的に評価しましたが、現場への浸透や定着を考えると、やはり使い慣れたツールを導入するのが最良だと判断し、Confluenceの導入を決意しました。また、リックソフトを介してJiraSoftwareなどのアトラシアン製品を導入したのですが、それとの親和性も考慮しました。これまでのリックソフトの営業対応や支援にも満足していたことから、Confluenceの導入について十分にサポート頂ける期待もありました。」(稲倉氏)
もちろん、既存のファイル共有・情報共有ツールにも同じような機能はあったものの、そちらは主にファイルストレージとしてすでに運用していたことから、Confluenceはテキストベースの情報共有基盤、既存ツールはファイル共有基盤としてすみ分けることで、ツールの役割を明確にした。また、クラウド版だけなくデータセンター版を選択できたこともConfluence導入決定の判断に大きく影響したと稲倉氏は述べる。
「金融に関わる開発ということで、情報漏えいは絶対に避けなければならず、開発環境においても厳しいセキュリティ対策が求められます。そのため、機密性が高い金融システムに関わる情報を共有していくには、Jira Softwareと同じくリッククラウド上で構築できるデータセンター版がベター でした」(稲倉氏)
実際に導入プロジェクトが始動したのは2021年11月末のこと。運用しながらその都度ルールを変えていくといった方針のもと導入を進めた。
「権限を絞りすぎることなく、運用ルールで制約をかけて情報を共有するスタイルを選択しました。開発については外部のパートナーにも情報を参照してもらえるよう、中央集権的に管理し、社内情報には制限を設けました。ただ、特定のスペースについては、ある程度自由にすることで積極的な情報の共有、蓄積が行われることを期待しました」(稲倉氏)
Confluenceは500ライセンスが導入され、現在のアクティブユーザー数は330ほど。特にエンジニア同士の情報共有に広く活用されている。
「Confluenceの導入により、エンジニア間での情報共有のスピードが向上し、開発業務の効率化を実現しました。これまではツールごとにナレッジが散在しサイロ化している状態でしたが、仕組みを整えられたことで、Confluenceにナレッジを集約するという文化が醸成されました。また、人に質問する前に、まずはConfluenceに探し行くといった文化が形成されたのも大きな導入効果です」(稲倉氏)
このようにエンジニアの情報共有の場として活用されているだけでなく、バックオフィス部門でもConfluenceが活躍しているという。
「バックオフィス部門で利用する書類についてもConfluenceでの情報共有が進んでいます。たとえば出張時の交通費の精算についてのマニュアルなど、従来はあまり整備されておらず、どこで公開されているかもわからないことがありました。そういったマニュアル的な文書、および人事的な手続きといった文書についてもConfluenceで管理、共有されつつあります。また、議事録をConfluenceに残したり、社内通達をConfluence上で配信したりと、社内に関するありとあらゆる情報が集約されました。加えて、新入社員が見るべき社内マニュアルについてもConfluenceに格納しているため、スムーズな手続きが実現しています。このように、Confluenceの導入により、社員誰もがすぐに欲しい情報にたどり着けるようになったのが大きな導入効果です」(稲倉氏)
Confluenceの運用にあたり、社内のコミュニケーションの活性化にもつながる「パーソナルスペース」の活用も推進している。
「パーソナルスペースでは、各個人が自由に発言したり、交流したりできるため、コラボレーションの場として機能することを期待しています。もちろん、社外に出してはいけない情報もあるため、ログのチェックやConfluence自体にIP制限も施しています」(稲倉氏)
Confluenceにより、エンジニアの情報共有とバックオフィス部門におけるナレッジの共有を実現したゼロバンク・デザインファクトリー。今後は、さらなる利用拡大に向け、社内周知を続けていくとのこと。また、リックソフトによる運用サポートにも大きな期待を寄せている。
「業種業界問わず、いまやデジタルトランスフォーメーション(DX)は無視できない経営課題になっていますが、どの企業もその旗振り役となるデジタル人材の確保が難しくなっているのが現状です。その第一歩として効率的なツールを積極的に取り入れることは必要ですが、業務効率化や利便性を高めるツールをきちんと選定しなければ、かえって非効率になることもあると思います。その点、Confluenceを含むアトラシアン製品は、効率性・利便性の高いツールと言えます。もちろん、それらを提供するリックソフトのサポートには大変満足しており、信頼できるパートナーのひとつとして認識しています。これからも変わらぬご支援をお願いできればと思います」(稲倉氏)
本事例の内容は2023年2月取材時のものです。
本事例に記載されている会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。