2023.08.31更新日:2024.04.12
AI、機械学習、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールの普及、5Gの商用化とIoT機器の連携性向上など、日々技術・環境が進化し続けているデジタル時代において、DX(デジタル・トランスフォーメーション)実現のために「IT投資」の必要性が高まっています。
とはいえ、便利そうなITツールをなんでもかんでも予算が許す限り導入すればいいわけではありません。組織にとって意味のあるITシステムの導入を行うには、定量的な投資の判断をしたうえで、最適化することが重要です。
本ページでは、IT投資の最適化についてご紹介します。効果の出るIT投資を行いたい経営者やITサービス責任者、IT資産管理担当者の方は、ぜひチェックして近年の動向を把握し、成果を出すための参考にしてください。
IT投資とは、業務の効率化やコスト削減、セキュリティ向上、顧客満足度向上、ITを活用した新ビジネスの提案・開発などへ費用をかける企業活動のことです。情報資本を作り上げ、維持することで、経営状況をより良くします。
適切なIT投資を行うには、PDCAサイクルを回して投資をマネジメントしていくことが求められます。つまり、自社のIT投資に対する、マネジメントは不可欠であり、ツールを導入しプロジェクト管理を行うのが一般的です。そしてツールの導入の際には目的にあったものを選定することが重要となります。
2023年7月にIDCジャパンが発表した国内企業のIT投資動向によると、IT投資の増加計画を持つ企業の割合が「減少計画」の企業よりも9ポイント上回りました。増加理由の上位3項目は「ビジネス規模の拡大」「新規システム開発の増加」「経済状況」でした。投資意欲は増加傾向にあります。
同時に、基幹システムのモダナイゼーションが重要になっています。「2025年の崖」問題――レガシー化した基幹システムの保守が切れ、基幹システム対応した言語ができるIT人材が不足していることからデータのブラックボックスが危ぶまれる問題――を避けるためにも、経済産業省はDX推進を推奨しています。
2023年を振り返ってみると、各システム・アプリが生成AIアプリとの連携を相次いで発表しました。IDCの調査によると、日本は他国よりも生成AIへの期待が高く、またSlack社の調査では日本はAIによる要約ニーズが高いというデータが明らかになっています。2024年位独立系ITコンサルティング会社のITR社が調査したところ、94%の企業が前年よりもIT企業投資を増額すると回答しております。また、44%の企業が前年比1割以上の投資額増の意向を示しております。2024年はAI関連製品・サービスを中心に、企業のIT投資意欲が盛んになりそうです。
IT投資を最適化する最終目的は、効果を最大に引き出し、業務効率化や業務プロセスの自動化、データを基にした意思決定の実現などを通じて企業の競争力を高めることにあります。これを実現するには、計画・実行・評価を一連の活動として捉えるIT投資マネジメントが必要です。それぞれ詳しく解説します。
IT投資において費用対効果の分析は必須ですが、分析の目的が投資の承認を得るためだけに留まってしまってはいないでしょうか。
市場が絶え間なく変化している現代で競争力を維持強化するため、企業は常に組織の見直しを求められます。単にシステムや部門のような小さい範囲での課題ではなく、組織全体の成長を考える必要があると言えるでしょう。
その上で計画を立て、投資を行うことが、企業の競争力強化につながります。
ROIとは投資利益率のことで、Return On Investment(リターン オン インベストメント)の頭文字をとってROIと略されます。投資した費用に対し、どのくらい利益が出たのかをパーセント(%)で表します。計算式は以下の通りです。
【(利益額/投資額)× 100 = ROI(%)】
主にマーケティングなどの費用対効果を明らかにしたい場合に利用されており、ビジネスにおいて重要な指標の一つです。IT投資の最適化を行うことでIT投資の効果を最大にでき、結果的にROIの最大化(改善)につながります。
企業は株主・従業員・顧客・取引先など自社と関わりを持つ全ての人・組織といったステークホルダーに対して、資金を預かって投資したことについての理由やリスク、結果などを説明する必要があると考えられています。こういった考え方を「企業の説明責任(アカウンタビリティ)」と呼びます。
IT投資においても、企業は「活用の責任」「開発の責任」「投資の責任」を持ち、IT投資の妥当性の判断や、開発や投資にあたってのリスクの明確化などを行わなければなりません。
IT投資マネジメントはIT投資の最適化を図るために実施するものであり、業務改革とIT投資の最適化の両輪で捉えることが重要です。そのためIT投資のみを個別で取り出す投資評価の実践は好ましくありません。こうした課題が多く存在する理由として、会社全体の経営から見た投資判断基準が設けられていないことが挙げられます。
そこでIT投資マネジメントにおける投資判断基準を示した「成熟度評価のフレームワーク」がGAO(General Accounting Office:米国会計検査院)により作られ、会社全体の経営から見た投資判断基準が示されました。
成熟度評価のフレームワークでは、マネジメントの成熟度を5つのステージに当てはめて評価します。成熟度評価のフレームワークを活用することで、会社経営における優先順位から見た適切な投資判断が可能です。これによりIT投資が業績につながらないといった問題を回避し、投資の全体的な活性化を図っていくことができます。
※出典:一般財団法人日本情報経済社会推進協会「IT 投資マネジメントガイドライン」平成19年3月 https://www.jipdec.or.jp/library/publications/u71kba0000002i4l-att/18_h001.pdf(2023年1月12日)
IT投資では以下の2つの視点でPDCAサイクルを回します。
戦略マネジメントは、企業活動の中で発生する複数の個別プロジェクトの関連性を可視化し、最適化する施策です。全体(プログラム)の成果につなげることを目的としており、計画フェーズ」「モニタリングフェーズ」「コントロールフェーズ」で構成されています。
計画フェーズでは、経営戦略と戦略マップの作成やIT投資テーマの設定などを行い、それらをもとにIT投資計画を作成し、プロジェクトの実施可否の判定を行います。
モニタリングフェーズでは計画フェーズで作成した計画に則って実施される、個別プロジェクトの状況をモニタリング。
コントロールフェーズでは実施されたIT投資計画の見直しを行い、現在実施中のプロジェクトをもとに中・長期の計画の作成を行います。
※出典:財団法人日本情報処理開発協会 「IT投資マネジメントガイドライン」平成19年3月 https://www.jipdec.or.jp/library/publications/u71kba0000002i4l-att/18_h001.pdf(2023年1月12日)
個別プロジェクトマネジメントとは、特定の目標を一定期間内に達成することを目的としたマネジメントです。個別プロジェクトマネジメントは、計画フェーズ・モニタリングフェーズ(中間)・モニタリングフェーズ(事後)で構成されています。
計画フェーズでは実施計画の作成やそれをもとにした投資額の見積もり、評価方法の決定、目標の設定、データ収集・分析などを行います。
モニタリングフェーズ(中間)ではモニタリングを行うための中間評価を実施。結果に応じてプロジェクトの実施計画の修正が行われます。
モニタリングフェーズ(事後)では結合したプロジェクトを評価します。評価内容はでプロジェクト終結後のフォローを促します。
※出典:財団法人日本情報処理開発協会 「IT投資マネジメントガイドライン」 平成19年3月 https://www.jipdec.or.jp/library/publications/u71kba0000002i4l-att/18_h001.pdf(2023年1月12日)
実際にIT投資を最適化していくには、情報の蓄積と活用を行い、PDCAに反映できる環境が必要不可欠です。情報とITを活用して顧客価値を高めるために、アジャイルに対応したIT経営の充実に加え、それを意識した行動を組織に定着させる必要があります。
アジャイルとは小さなタスク単位で実装からテストを繰り返し、作業を進めていくプロジェクト進行方法のひとつです。
従来のプロジェクト管理と比べ、PDCAをより高速で回せるため、市場の変化に柔軟かつ迅速な対応ができるようになります。開発したシステムなどの有用性や市場効果をより早く確認できるため、有用なものに追加投資して効果を拡大させたり、見込みのないものは早く止めて損失を抑制したりといった選択が可能になります。
海外ではアジャイルを実現に特化した、クラウド型の管理支援ツールの機能を活用して成功している企業が多くあります。
最適なIT投資によるアジャイル開発体制の構築に取り組みたいが、どのように管理すればよいのかわからない。そういったお悩みをお持ちの企業には、ITツールの「Jira Software」の導入がおすすめです。
Jira Softwareでは「かんばん」や「スクラム」といったアジャイルの代表的な手法に応じた多様な分析ツールを提供しています。もともとはプロジェクト管理ツール、バグ解析ツールですが、ITツール導入をひとつのプロジェクトと見立ててタスク管理・段階的なプロジェクト管理が可能となります。
IT投資の最適化をより効率的に進められる他、eラーニングや研修、ガイドブックやサポートサービスといったツールを活用するための支援環境が整っているため、初めてクラウドツールを利用する企業にも導入しやすいツールと言えます。
Jira AlignはJiraシリーズの一つであり、より大きな規模のビジネス開発をアジャイル化しやすくするツールです。
Jira Softwareは個々のプロジェクト内の作業を管理するのに特化していますが、Jira Alignでは複数のプロジェクト同士の関連性やデータを組み合わせた、組織全体の運営管理を行えます。全てのチームの認識をそろえ、経営戦略に沿った活動が行いやすくなるため、企業やプロジェクト全体の規模が大きい場合は、こちらのツールがおすすめです。
ビジネスアジリティの実現に向けたコンサルティング&トレーニングサービス「Step-Up Agile With Jira(ステップアップ・アジャイル・ウィズ・ジラ)」は、IT投資によるアジャイル化に際して、理解度や変革状況に応じた支援を受けることができるサービスです。
サポートレベルは複数のステップに分かれており、ステップに適したJira製品を1つのパッケージとして利用できます。導入することで、組織全体で足並みをそろえたり、意思決定のスピードを上げたりする効果が得られるでしょう。
ここまでIT投資の最適化について説明してきましたが、IT投資を最適化する重要性をご理解いただけましたでしょうか。自社に合った最適なIT投資を行って、企業の競争力を高めましょう。
Ricksoftは高度なトレーニング要件をクリアした国内トップレベルのAtlassian Platinum Solution Partnerです。小規模のお客様から大規模のお客様まで対応実績があるため、IT投資の効果を最大化させたいと考えている方、自社に合った解決方法にお悩みの方はぜひご相談ください。