2023.09.21更新日:2024.03.01
昨今、デジタル技術の導入によって組織の変革を計画する企業や、社内にノウハウを構築したりコストの削減を図ったりするシステムの内製化を検討する企業が増えています。
中でもノーコード・ローコードのツール導入は、企業のDX化を促進しやすいとして注目を集めており、システムの内製化を実現したい企業にとっては有効な方法です。本ページでは、ノーコードとローコードの違いや、ツールを利用する上での注意点などについてご紹介します。
ノーコードとローコードは、ソースコードの記述量が異なるという違いがあります。「no-code」、「low-code」という言葉の通り、ノーコードはプログラミング言語(コード)を全く記述せずともアプリケーション開発ができ、ローコードは従来のプログラミング開発よりも少ないコードの記述で開発ができる手法です。
しかし、システム内製化の有効な手段として自社に合ったものを選択したいと考えていても、具体的な内容や違いが分からないと感じる方も多いのではないでしょうか。ここではノーコードとローコードの意味や違いについて、代表的な例をご紹介します。
先ほども少し触れましたが、ノーコードはソースコードの記述が全く必要ないので、プログラミング言語などの専門知識がない方でも直感的にアプリケーションやシステム開発ができる手法です。ローコードと比べると拡張性はないので仕様は限定的になるものの、シンプルで小規模なアプリケーションを作るといった際には活用できるでしょう。
ノーコードはツール内に元々備わっている機能を組み合わせて開発を行うので、ソースコードを記述していく従来のプログラム開発よりもバグやエラーが発生するリスクが少なく、その分かける時間や労力も少なく済みます。開発工数が少なく済むという点も踏まえると短納期でスピード感をもって開発したい企業や、シンプルなシステム開発を自社のノウハウとして蓄積しつつ非エンジニアの中でも効率的に開発したい企業の導入に向いています。
ただし、プログラミングの知識がないからといって、誰でもノーコードツールで開発を行えるわけではありません。
基本的なコンピュータースキルを擁するのはもちろんのこと、エンドユーザーの課題やユーザビリティへの理解を持ち、ワークフローのプロセスやロジックの設計能力があって初めて使いこなせます。また、ドキュメントを読んだとしても、いきなりノーコードツールで完璧なものは作れません。トライアンドエラーを繰り返せる粘り強さも求められます。
ローコードは0からのコーディングが必要なく、従来のプログラム開発と比べると少ないコード量でアプリケーション開発ができる手法です。自社で行うことを踏まえると、コストを抑えつつスピーディーに開発できる点や、業務を効率化できる点はノーコードと同じ利点があります。
コーディングにかける時間を圧縮でき、より短期間での開発・実装が可能です。ローコードは必要に応じて直接コードが記述できる点で拡張性があり、機能を追加・削除したり改修がしやすくなっていたりするのが特長です。
かんたんまとめ | ||
---|---|---|
ローコード | ノーコード | |
コーディング能力 | いる | なくても利用可能 (あると望ましい) |
ビジネスプロセス理解 | 〇 | 〇 |
論理的思考能力 | 〇 | 〇 |
プロジェクト管理 | 〇 | 〇 |
2023年には生成AIが注目されました。コードソース管理ツールの中にはコーディング中にAIがコードを支援してくれるものや、自然言語でモバイルアプリケーションを開発できるとうたうものも台頭しています。IDCの調査によると、日本は世界平均よりも生成AIへの期待が高く、特にコードの生成に注目しているという結果が出ています。
ノーコードやローコードが注目されるようになった主な背景には、4つの理由が考えられます。
1つ目は日本全体でIT人材が不足していることです。経済産業省が行った調査によると、若者の人口減少と高齢化に伴ってIT人材は減少していくとされており、将来的に約40~80万人規模で不足すると言われています。(*1)
2つ目に、DXの推進に取り組み始めている企業やツールの導入を検討する企業が増えていることが挙げられます。IPAのDX白書2023によるとDXに取り組んでいる企業の割合は約69.3%と2021年度よりも約13.5%増加しており、年々DX促進を意識する企業が増えてきていることが見て取れるでしょう。(*2)
3つ目の理由として、ITにかかわる業務をほとんどベンダーに委託している企業は、社内にシステムに関するナレッジや専門知識を持った社員が不足していると考えられます。先述のとおりIT人材は不足しており、採用活動を行ってもすぐに条件に合う人材が見つかるかは分かりません。そこで非エンジニアでも開発が可能なノーコードや、少量の記述で開発できるローコードが注目を集めているのです。
4つ目に、生成AIの台頭があります。前述のとおり、生成AIによるコーディングに期待が集まっています。同時に、ノーコード・ローコードツールと生成AI機能が連携をすれば、自然言語でのアプリ開発、システム最適化ができるという展望が描かれています。実際に、多くのノーコード・ローコード開発支援ツールやプラットフォームがChatGPTとの連携を発表しました。
(※1)参考:経済産業省「参考資料(IT人材育成の状況等について)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s02_00.pdf(参照2023-04-07)
(※2)参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「IPADX白書2023」
https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108048.pdf(参照2023-04-07)
専門的な知識がなくても開発が行えるノーコード・ローコードツールですが、いくつか気を付けるべきポイントがあります。業務の内容や範囲によっては、これらのツールでは十分な機能を果たせずシステム開発が進まないといった可能性もあるので、導入前に確認が必要です。ここではノーコードツールやローコードツールで開発を行う場合の注意点をご紹介します。
システムの内製化については下記ページで詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
ノーコード・ローコードツールは基本的な機能のみで設計するケースが多く、既存で提供されている機能以上の設計や開発を行うことが難しいため、基幹システムやデータベースを取り扱うような大規模で複雑な開発業務には向いていません。拡張性に制限があるため業務で別の機能が必要になった際には新たにツールを導入しなければならず、結果的にシステムを内製化してもコストカットが実現できない可能性があります。
ノーコードツールやローコードツールでできることには限りがあるため、企業や部署内で導入を検討している場合は注意しましょう。
シャドーITとは、企業や情報システム部などに把握されていないシステムやサービスのことです。ノーコードツールやローコードツールは簡単にシステムやアプリ開発ができるのが利点ですが、一般部署の中で許可なく使用しているとシャドーITが乱立してしまうことになりセキュリティ面でも問題があります。
ノーコードツールやローコードツールを使って開発を行いたい場合は誰が、いつ、どのような目的で使用するのかなどの、使用方法やルールを決めた上で導入し運用するのが望ましいです。
いざノーコードやローコードのツールを活用して開発を行っていくことが決まったとしても、社内に開発のノウハウやナレッジがなければ結局ツールベンダーに頼る形になり、本当の意味でのシステム内製化とは言えない状況になってしまいます。さらにツールのサービスが終了してしまった際、他のプラットフォームに乗り換えることができれば問題ないように見えますが、システム連携が取れないツールの場合乗り換え自体が困難です。
0から新たにシステムを構築するという手段もありますが、やはり専門的な知識が必要になります。ノーコードやローコードのツールを使ってシステムを内製化する際は、併せて開発に関するノウハウやナレッジを蓄積し共有することもおすすめです。
ここまでノーコード・ローコードについて説明しました。個々の開発や導入が進んでくると、システム統合の変更が頻繁に発生します。ノーコード・ローコードで変化するインターフェースへの対応を実現するための仕組みiPaaSとしておすすめするのが「Workato」です。
「Workato」を利用すると、クラウドシステム間の連携がノーコード・ローコードで実現できます。
活用によって生産性の向上、メンテナンスビリティの向上を目指せるでしょう。
システムの内製化に向けた開発自体はノーコードやローコードのツールでも可能です。ただし上記のような注意点に気を付けて内製化を進めるのであれば、短スパンで要件定義からリリースまでを行うアジャイル開発の進行管理ツールや社内共有に適したツールと併用すると、効率的にプロジェクトを進めることができるのでおすすめです。
アジャイル開発に関しては下記で詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
「Jira Software」とは、アジャイル開発を実現し仕様変更や追加機能にもスピーディーに対応するためのプロジェクト管理ツールです。内製化プロジェクトを進める際に、個々のタスク状況を確認できたり作業の適正化を管理できたりします。またスピード重視の開発をサポートするため、開発期間を定義する機能やチームの平均作業量を可視化する機能も備わっています。
Jira Softwareはノーコードやローコードのツールではないものの、直感的なUIやUXで簡単に操作可能で、スムーズに開発を行うための併用ツールとしておすすめです。
「Confluence」とは、社内の情報を共有・管理するためのツールです。さまざまなチームやプロジェクトでも使いやすいように各テンプレートが用意されているので、社内マニュアルや日報などの文書作成にも向いています。
このようなツールを使えば、シャドーITの乱立を防ぐためにルールや内製化フローの手順などを文書にまとめ、いつでも検索して確認できます。加えて内製化に関わるノウハウやナレッジを組織内へリアルタイムで共有できるので、将来的にツールベンダーに依存しない体制を社内で整備することが可能です。Confluenceは開発をする際、オープンに情報共有・管理をしたい方におすすめのツールです。
システムの内製化においてノーコードツールやローコードツールを検討している方に向けて、それぞれの特長や導入の注意点について解説しました。ノーコードやローコードのツールでシステム開発をする際は、Jira SoftwareやConfluenceなどの進行管理ツールやナレッジ共有ツールを併せて導入すれば、スムーズなシステムの内製化を実現できるでしょう。
RicksoftはAtlassian社のパートナー企業として多数の実績を残しており、製品の導入支援から導入後のサポート、研修など幅広い顧客要望に対応しています。ノーコードツールやローコードツールを使ってシステムの内製化を実現したいとお考えの方や、導入したいツールでお悩みの方は、自社に合った解決方法を提案してくれるRicksoftにぜひ相談ください。