不動産情報サービス企業、アットホーム株式会社(以下、アットホーム)では、Jira SoftwareやConfluenceをはじめ、Bitbucket Server、Bamboo、HipChatといったアトラシアン製品をRickCloud上で運用。開発環境の効率化を図っています。同社 情報システム部 次長 服部 渉氏(写真右),と情報システム部 チーフアーキテクト 高野 孝之氏(写真左)に、各製品導入の経緯とねらいについて詳しく聞きました。
1967年の創業以来、不動産情報メディア・不動産業務ソリューションなどの事業を通じて、不動産にかかわる事業者や一般生活者に役に立つサービスを提供している。設立当初から、加盟不動産店を対象とした『ファクトシート・リスティング・サービス(図面配布サービス)』を中心に事業を展開。全国で約54,000店の不動産店が利用する不動産情報の共有ネットワークを構築している。
現在では、不動産会社向け業務支援サイト『ATBB』、一般生活者向け不動産総合情報サイト『アットホーム』、新築・分譲マンション専門サイト『アットホーム 新築マンションプリーズ』などを展開。さらにスマートフォンやタブレット向けのアプリの開発など、常に時代の流れを先取りしたシステムやサービスを開発・提供している。2017年に創業50周年を迎える。
現在当社には、基幹システム、勘定系システム、BtoB向けシステム、BtoC向けシステムと大きく4つの開発グループがあります。それぞれ利用状況や利用ライセンス数などは異なりますが、次のアトラシアン製品を導入しており、2016年2月からすべてリックソフトが運用するクラウドサービス「RickCloud」上での運用を開始しました。
新しく始まる開発プロジェクトはすべて、これらの開発環境を利用してプロジェクトを進めていきます。また、既存のシステム開発プロジェクトも可能な範囲で移行する予定です。
社内の開発メンバーは約150名おり、外部も含めると200ユーザーを超えます。
Jira Softwareは、バグ管理などを行うためかれこれ10年ぐらいは利用してきました。ただし、これまでは各開発グループが開発プロジェクトごとに管理ツールや開発環境を自由に選んでいましたので、すべての開発プロジェクトで利用されてきたわけではありません。 アトラシアン製品であればConfluenceやHipChatも一部のプロジェクトでは利用していました。その他、開発ツールではTeam Foundation Server(以下、TFS)を、プロジェクト管理ではRedmineを、CIであればJenkinsなども利用してきました。
もちろん、プロジェクトごとに開発しやすい環境を選ぶのはプロジェクト単位で見れば悪いことではないかもしれません。しかし、 従来の開発環境では次のような要因がボトルネックとなり、 限られた開発リソースとコストで、プログラムの肥大化や開発サイクルの短縮化に対応することが難しくなってきました。
そこで、システムやプログラムの品質向上や開発効率化を図るため、開発環境を統一しようということになりました。
代表者が集まって、導入する環境の選定をしました。一度決めたら簡単に変えることはできませんので、約3か月間、時間をかけて議論・検証しました。
アトラシアン製品を選定した主なポイントは次の通りです。
Confluenceを中心に、アトラシアン製品で管理する情報を見渡せるツールチェーン環境は大きな魅力でした。アトラシアン製品で統一することで、開発環境を統一する効果をさらに高めることができると期待しました。
たとえば、Jira SoftwareとBitbucket Serverとのツール連携では、Jira Software上で「プルリクエスト中」というメッセージが表示されるなど進捗を確実かつ容易に把握できます。また、Confluenceによるナレッジ共有・情報共有からスタートし、アトラシアン製品群のツールチェーンへと段階的に利用範囲を拡大できるのも魅力でした。
インフラ運用をリックソフトに任せることができ、サイジングなども気にせず、アトラシアン製品に特化したクラウドインフラを利用できるという点もアトラシアン製品を採用した大きなポイントでした。
一部、Redmineの採用を主張する意見もあったのですが、リックソフト社が開催する管理者研修を受講したことで、Jira Software自体や使いどころのコツが理解でき、結果的には意見をまとめることができました。
RickCloudはAmazon Web Services(AWS)という世界有数のクラウドサービスで運用されているので、信頼性やセキュリティーに関して、問題視するような声は出ませんでした。しかも、RickCloudはディスク容量などの制限もなく、アトラシアン製品の専門家であるリックソフトが運営しているクラウドサービスなので安心して利用でき、運用も任せられると判断しました。
利用を開始して半年ほど経過しましたが、着実に成果は上がっています。現時点での主な成果は次の通りです。
Confluenceを中心とした情報共有が進み、これまで情報が共有されていなかったために発生していた開発プロセスでの問題が改善され、手戻りなどが解消されてきました。
また、別のプロジェクトで発生した事象に対して、他のプロジェクトメンバーが解決のためのアドバイスやコメントをする機会が増え、開発現場の風通しがよくなりました。
スケジュール共有に関して、これまではタスクを手作業で整理して表計算ソフトに記入したデータをグループウェアに貼り付けていました。
今ではJira SoftwareとTeam Calendars for Confluenceとを連携して、開発プロセス上のタスクがカレンダーに自動で反映されるようになりました。また、 グループ単位、個人単位でカレンダーを表示できるので、個人の予定とプロジェクトの予定を見渡すことができるのもとても便利です。
システムインフラの運用負荷から解放されたことにより、これまで管理部門が管理していた開発基盤のアカウント管理権限を開発部門に移管しました。現場で開発業務に合わせた迅速かつ柔軟に権限の設定ができるようになりました。
また権限設定に関しては、個人への権限付与ではなく、グループや組織への権限付与に変更したことで、閉鎖的であった開発プロセスがオープンになりました。
さらに、RickCloudによってユーザー管理が一元化できたのも助かっており、将来的にはMicrosoft Active Directory(AD)との連携も考えています。
苦労したことは特にありません。むしろRickCloudを導入したことにより、短期間でサービスの利用を開始することができました。また、リックソフトにサポートしてもらい、既存環境からRickCloudへ問題なくデータ移行することができました。
旧開発環境からの移行を完全に終えること。さらには、すべての開発グループでの導入も済んでいませんので、まずはこれらが目先の目標となります。
その後は、日付を変更しテストをバッチで実行するなどの手順をボット化してHipChatで実行したり、開発フローを簡素化したりパターン化したりするなど、細かな部分になるかもしれませんが、さらなる効率化を進め、ソフトウェアの品質向上につなげていきたいと考えています。
リックソフトは経験が豊富で技術力が高く、クラウドインフラから各ツールの使い方までワンストップで対応してもらえるのでとても助かります。今後も、的確な情報発信と高度なサービスの提供に期待しています。