Confluenceで全社規模でのナレッジ共有基盤を構築
検索性とアクセス性の劇的な向上で業務効率化も実現
アイペット損害保険株式会社
ペット保険のパイオニアとして、2004年の設立以来、業界を牽引し続けているアイペット損害保険。同社では、社内のナレッジ管理に課題を抱えており、各部署が独自に情報を管理していたため、情報の分散やバージョン管理の不備が生じていた。この課題を解決するべく2020年にナレッジマネジメントツール「Confluence」を導入。リックソフトのサポートを受けながら、オンプレミスからクラウドへの移行を成功させるなど、全社規模での情報共有を実現した。今回は、Confluence導入の経緯やその効果、移行における苦労話や今後の展望について話を聞いた。
アイペット損害保険は、犬や猫などの愛玩動物(ペット)向けの損害保険商品を提供する、第一生命ホールディングス傘下の損害保険会社。通院・入院・手術をフルカバーで補償する「うちの子」、そして手術の補償に特化した「うちの子ライト」を取り扱っている。さらに、高齢期と言われる12歳11か月まで新規加入できるほか、窓口精算が利用できる点なども評価され、近年はその契約数を着実に増やしている。
(取材対象者)
情報システム部 システム基盤
グループマネージャー
玉山 仁一氏
情報システム部 システム基盤グループ 主任
北川 光太郎氏
情報システム部 システム基盤グループ 兼
DX推進グループ シニアリーダー
近藤 昭彦氏
2004年5月の設立以来、日本のペット保険業界を牽引し続けているアイペット損害保険。同社では、「ペットの保険が当たり前の世の中にする」というミッションを掲げて歩み続けており、ペット保険市場の発展に大きく貢献してきている。2024年5月には設立20周年を迎え、保有契約件数も90万件を超えるまでに至った。また、2024年4月には第一生命ホールディングスの傘下となり、同社グループの一員として「ペットと人とが共に健やかに暮らせる社会」の実現に向け、さらなる成長を目指している。
そんなアイペット損害保険では、社内ナレッジの管理に長らく課題を抱えていた。各部署が独自の方法で情報をバラバラに管理しており、必要な情報を探し出すのに時間がかかっていた。また、情報のバージョン管理が不十分で、どの文書が最新版かが分からなくなることも少なくなかった。さらには、シャドーITのリスクもあったことため、ガバナンスの観点からも課題になっていたという。
「特に情報システム基盤グループ内では、ナレッジが分散しすぎており、システム構成図やネットワーク図はExcelやWord、Visioで個別に作成されていました。そのため、これらの管理が煩雑化していたのです」(北川氏)
このような背景から、情報を一元管理するためのツールを模索していた同社が着目したのが、ナレッジマネジメントツール「Confluence」だった。情報の分散の問題を解消してナレッジ管理を一元化するべく、従来のファイルサーバーやSharePointでは解決しきれない部分を補うために、Confluenceの導入を決断した。
アイペット損害保険では、まず2020年にオンプレミス版のConfluenceを導入し、全社的なナレッジ共有ツールとなることを目指して活用を開始した。ここでは、ドローイングツールのdraw.ioやGoogle Driveとの連携、Excelのスプレッドシートをそのまま表示できるアプリ(アドオン)を活用することで、従来のツールでは実現できなかった柔軟なナレッジ管理を可能にした。
「ツール選定において、アドオンの充実度がConfluence採用の大きな決め手になりました。市場に出回っているナレッジベースツールの中には、機能拡張のためのアドオンが少ないものもあります。一方、Confluenceではアドオンが豊富に用意されているため、柔軟なナレッジ管理を実現するうえで最適だと考えました。また、全社的に使っていただくには、操作性も求められます。その点、Confluenceは直感的に操作できるため学習コストが低く、『このツールどうやって操作するの?』といった情報システム部への問い合わせも減らせると考えました」(北川氏)
その後、同社はクラウド版Confluenceへの移行を決断。この移行は2022年初頭に開始され、約半年の期間をかけて慎重に進められた。まず、クラウド版での使用感や各種アドオンの互換性、データの移行における問題点を検証するために、PoC(概念実証)を行った。さらに、マニュアルの整備も進められた。特に苦労したのは、ユーザーデータの移行であり、膨大なデータを正確に移行するためには、綿密な計画と徹底したテストが不可欠であった。
「移行がうまくいかなかった場合どうするのか?というユーザーからの質問が多かったですね。我々としてもそのリスクが一番気がかりでした。そのため、何度もテストを重ねながら、リックソフトのヘルプデスクとも足並みを揃えて移行を進めていきました。コロナ禍でリモートでのコミュニケーションをせざる得ない状況でしたが、リックソフトのヘルプデスクの担当者はレスポンスも早く親身になって対応してくれたので、クラウド移行を進めるうえで非常に助かりましたね」(北川氏)
また、クラウド移行に際しては、シングルサインオン(SSO)を実現するために、AzureでのSAML認証が必要となり、Atlassian Guardの導入が行われた。これにより、セキュリティを確保しつつ、社員全員が簡単にアクセスできる環境が整った。
「Confluence自体のツールとしての優秀さはもちろんですが、リックソフトのサポート体制が充実していたことが、円滑な移行に大きく貢献したと考えています」(近藤氏)
当初、情報システム部を含む2つの部門で始まったConfluenceの利用だが、クラウド移行を経た現在では全社規模で展開。約800人のユーザーがConfluenceを活用している。
「情報システム部門はサポート窓口の役割を担っていますが、ユーザー部門からの質問はまったくと言っていいほどないですね。これも、Confluenceならではの直感的でわかりやすいUIのおかげです」(玉山氏)
全社的な情報共有やナレッジマネジメントがスムーズに進められるようになった点について、玉山氏は次のように評価する。
「クラウド化による心配もありましたが、実際に使ってみると問題なく、社員の誰もが欲しい情報にすぐにたどり着けることができています。検索のスピードと精度が高く、曖昧なキーワードで検索しても必要な情報にアクセスできる点も非常に優れています。こうした高い検索性能により、情報へのアクセスが効率化され、ユーザーの負担が大きく軽減されました」(玉山氏)
また、各部署に分散していたナレッジの集約が実現し、情報を探すための人的工数が大幅に削減されたという。
「かつては部署ごとに異なる方法でナレッジが管理されていたため、情報を探すのに多くの時間を費やしていましたが、Confluence導入後はすべての情報が一元化され、非常に効率的に作業が進められるようになりました」(近藤氏)
さらに、議事録の管理が改善された点も大きな導入効果になっている。Confluenceに搭載されている標準化されたテンプレートに基づいて簡単に議事録が残せるようになったことで、後の確認作業もスムーズに行えるようになった。
「Confluence導入前はファイルを作るのが億劫で議事録を残さないという人もいたのですが、Confluenceは使いやすいテンプレートが充実しており、議事録作成のハードルが大幅に下がったため、議事録を残す文化が定着しました」(近藤氏)
現在、情報システム部門としては、全社規模でのさらなる本格展開を見据えた運用ル ールの整備にも取り組んでおり、今後は各部門がそれぞれの部門長のもとで自主的に管理できる体制を整える予定である。これは、ツールの管理負担を情報システム部門に集中させず、全社的な活用を促進するための重要なステップとなるだろう。
また、Confluenceのさらなる利活用に向けて情報収集を進めており、特に生成AI機能や他のツールとのデータ連携に着目しているという。
「社内でもAI活用の方針が出ていることから、Confluenceの生成AI機能をぜひ活用してみたいと考えています。また、社内でよく使用されているGoogleチャットとの連携も進めていきたいですね。このほかにも、まだ使いこなせていない機能があるので、ユーザーコミュニティへの参加などを通して情報を収集していこうと考えています。このように他の社内ツールとのシームレスな連携が、業務効率のさらなる向上につながるだろうと期待しています」(近藤氏)
さらに、アクティブユーザー率の向上を目標として掲げている。
「もっと多くの社員が無意識にログインして利用するような状況を目指しています。まずは情報を見てもらい、次に自分たちでもナレッジを蓄積できることを実感してほしいですね。そのためにも、まずは自分たちが利用して感じたConfluence の良さを積極的に伝えることが重要であり、さらに経営層にもその価値を理解してもらうきっかけを作っていくことが必要だと考えています。これを実現するためにも、引き続きリックソフトの営業チームと密に連携して、アップデート情報や有益な新機能などを効率よくキャッチアップしていきたいです」(玉山氏)
Confluenceの進化とともに、リックソフトとのパートナーシップが、アイペット損害保険の今後の成長を強く後押ししていくことだろう。
本事例の内容は2024年9月取材時のものです。
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